不思議な話というか、とりとめもない話です。
山寺の住職だった祖父母も年をとって、叔父がその寺の住職となった。
叔父のお嫁さんは離れた地方の人で、実家のある地方に帰りたがっていた。
それで、叔父はその地方の寺の住職になることになり、引っ越しすることになった。
祖父母はその土地を、その土地の人達を愛していて、骨をうずめるつもりでいたので、引っ越しするのをひどく悲しがった。
川の主
祖父は寝たきりで、祖母が世話をしていた。
祖父は自分を絞め殺してくれと言うまでになっていた。
叔父とともに引越しするか、それとも他の息子夫婦のところで世話になるかということになり、祖母も絶望して、山寺を降ったところにある川に橋の上から飛び込もうと家を抜け出した。
寺の人間なのに、自殺しようとしていた。
寺だろうが何だろうが、結婚して家庭を持ち、嫁姑問題もあり、普通の家庭と全く同じである。
それに気付いた祖父が大声で騒いで、橋から飛び込む寸前で叔父が引き止めた。
祖母が飛び込もうとした橋から、私もいつも川を見下ろしていた。
淵になっていて、時折魚の姿が見えた。
緑の水で、その川の風景を私もとても愛していた。
時々夢で、庫裏から見下ろす棚田の上を、空を飛びながら見ていることがある。
ああ、帰ってきたとその夢を見ると嬉しい。
橋から川を見下ろす夢も見ていた。
見下ろす淵には、体長四メートルか五メートルくらいの魚が二匹いて、夫婦のようにも思えた。
あまりにもその風景が好きで、子供らしい一途さから全身でその景色を求めていたので、川の主が姿を見せてくれたのだろう。
川の主が祖母を助けてくれたような気もする。
その川は下って由良川となる。
由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな
あの土地は何故か熱烈に愛すると、呼んでくれて夢を見せてくれる気がする。
祖父母がいた山寺は今では無住で、近所の寺の人が兼任住職をしているらしい。
ネットで調べるとあの山寺は元は山城だったそうで、
山城好きな人にはけっこう有名らしい。
栗畑になってる山寺から一段上の場所は綺麗に石垣がくんであり、山城だった名残のようです。
もっと上にも石垣が残っているけど、子供だったので危ないから行ったことはなかったです。
山城巡りが好きな人が時折写真をアップしてくれる。
懐かしい風景がネットで出てくる。
今は もう知っている人はほとんどいないが、いつかまた訪ねてみようと思う。